【日 付】2016年9月10日(土)~12日(月)
【山 域】日高山脈 幌尻岳
【天 候】曇りのち晴れ
【メンバー】11名
【コース】
9/10セントレア7:10>>8:55新千歳空港==とよぬか山荘12:00==13:00第2ゲート…15:30北海道電力取水口…20:15幌尻山荘(泊)
9/11 幌尻山荘6:15…8:10命の水…10:45幌尻岳12:00…13:40命の水…15:10幌尻山荘(泊)
9/12 幌尻山荘4:00…7:00北海道電力取水口…10:00第2ゲート…12:00とよぬか山荘==17:30新千歳空港19:20>>21:20セントレア
自分としては10年程前に訪れている山で雨だった登山のリベンジとしても気になっていた山だった。
企画はしたものの、慢性金欠病の自分としてはアクセスをLCCに依存する選択肢しかなく。このオーダーがただでさえ登山というリスクのある遊びの中で、キャンセル料100%というさらなる経済的リスクを負うことになった。
おりしも7月からの北海道は次から次へと台風が押し寄せ、トムラウシ、雌阿寒などへのアクセスはズタズタになってしまった。
幌尻へのアクセスはというと、台風10号など8月から4連発の台風の影響で幌尻山荘への前線基地とよぬか山荘からのシャトルバスは台風13号の影響で運行するかどうかわからない。予想進路は9/10に北海道に最も近づく予報であった。
9月に入ってからとよぬか山荘のHPを毎日チェック。モチベーションがどんどん下がってくる。シャトルバスの運休が7/28~31、8/17~9/5登山シーズンのほとんどを入山規制となって、やっと9/5~運行再開となったところへ台風13号の発生でどうなることかと思っていたら、9/9にシャトルバスが糠平川流量増加のため運休となった。
こうなってくると、天気予報や進路や参加予定者への連絡やJETSTARキャンセル料の回避のための転進先として後方羊蹄山の調査やら精神的にもかなり追い込まれてくる。
もう一つの代案であった新冠コースからの幌尻岳も林道崩壊で歩行者さえも通行止めと判明している。
セントレア早朝集合のため参加者数名に大野町の老舗旅館(とはいっても寂れてしまった常滑市内では格安旅館)に泊まってもらった。そのメンバーに前夜自分が顔を出して明日以降の予定を告げる。
訓練山行で愛知川遡行を催行したときスズメバチの被害にあったF沢さんに容体を聞く、同症の自分としてはちょっと心配。
とにかく明日以降の流動的な行程を天に任せ、山行の無事終了を祈って床についた。その夜のとよぬか山荘の新着情報は以下の通り。
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【2016年9月9日】
9/10(土)の1便(4:00発)まで運休とし、その後は明日9/10の朝6:00頃判断することとなりました。
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翌9/10(土)集合時刻6:10から30分早めに中部国際空港駅改札出口にてメンバーを待つ。
時を待たずして10分ほど前には全員集合してくれた。チェックインもすんなり済ませ受託荷物の手続きもあっさりと終わった。、保安検査を経て出発ロビーでスマホからとよぬか山荘のニュースをを確認した。
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【2016年9月10日】
2便7:00発~バス運行再開します。
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メンバーに内容を告げると歓声が沸き上がった。我々の利用便は第4便12時発であった。
とりあえず、幌尻山荘までの行程がつながったことになる。
新千歳空港にほぼ定刻に着陸。タイムズレンタカーのカウンターで手続きを済ませ、一路とよぬか山荘へと車を走らせる。U川さんとの2台でのアクセスとなった。
とよぬか山荘はかつての小中学校跡で校舎が宿舎となっている。12時少し前についてシャトルバスを待った。
北電取水口
やってきたバスは泥だらけのマイクロバス。
それを見ただけで林道の状況がわかるというものだ。
途中から見る糠平川本流は泥水を含んだ茶色い水が堂々と流れている。不安がよぎる。果た
して遡行できるのだろうか。
シャトルバスに乗車したのは我々と男性登山者1名の合計12名。やはりキャンセルがあったの
か思ったよりも少ない人数だ。
13:00、第2ゲート到着。準備をして歩き始める。時折小雨がぱらつき、雨具を脱いだり、着たり
の林道歩きとなった。
第一便以前は運休なので入山している人もなく、すれ違う人もいない。
ところどころ林道修復の工事車両をやり過ごしたりユンボの脇を通ったりして15:30に北海道電力の取水口に到着した。林道はここで終わり、ここから登山道となる
糠平川の右岸に付けられた登山道を少し進むと、登山道が消失したように見えた。
よく見るとゴウゴウと流れる水の15m先の右岸壁に鎖がトラバースさせてあった。
その鎖まで水面から3mほどの位置の壁をトラバースせねばならなかった。水量と激流の水音でメンバーの顔がこわばる。落水すれば勢いよく流されるのは必至だ。
ここで初めてロープを張った。簡易ハーネスを120cmシュリンゲで作ってもらい、中間支点を一か所設置して掛け替えで通過する。
慣れないこともあり全員が通過するのにかなりの時間を要したが、無事通過できて、ほっとする。
いよいよ渡渉が始まった。水量も多いし流れも速い。足を取られそうになりながらもバランスを取って対岸へ渡り、ロープを設置。
既に沢装束になって準備万端のメンバーにカラビナをかけて渡渉してもらう、何度も何度もバランスを崩しロープにテンションがかかる。
安全第一でほぼすべての渡渉にロープを張った。それぐらいしないと流されそうな状況だったのである。
セルフビレイと肩がらみでのU川さん。
時には腰までの渡渉。水流に負けそうになる。
こんな感じで渡渉を10回ほど繰り返しているうちに、もう日が暮れてきた。渡渉開始から2時間で小屋到着の予定がすでにその時刻も過ぎて時計は18時30分を回った。
おおよその渡渉点は進んでいる側の岸が立ってくるとペンキマークや蛍光テープが現れる。前方に高まくような踏み跡がなければそこが渡渉点だ。とはいっても今日の渡渉は渡る場所を選ばないと胸までつかることになる。
全員のヘッドランプを水面に投影する、浅そうで流れのましな場所を探りながらトップで渡る。もちろんロープを引っ張っての渡渉だ。
メンバーを励ましながら、渡る人と水面を全員で照らす。ロープを張らなければ流された場合もう見つけられないと思うと時間がかかってもロープをすべての渡渉で張ることにした。
メンバーの不安をぬぐうために、GPSの画面を提示した。幌尻山荘まであと1kmだ。このGPSにどれほど助けられたか。
メンバーの様子は体が冷えつつある人もいたようだが、あと少しと励ましながらビバークするよりも前進だと決意する。見覚えのあるゴルジュ状の場所の渡渉にかかった。以前来た時は胸までの渡渉だった。
10年以上前の記憶であったがやはり胸までつかりながらの渡渉。確保しているロープにも力が入る。GPSを見るとあと500m。時刻は19時40分だった。
やがて岸から離れるように登山道が現れる。この道が幌尻山荘まで続いてくれと祈る。
GPSを見る、あと50m。小屋の灯りが見えた。ホッとした。後方で歓声があがる。最後に小屋直前での渡渉。ここも流れがきつかった。
幌尻山荘到着20:10。小屋のドアを開ける。小屋番に心配をかけたことを詫びる。北電取水口からコースタイムの倍の時間をかけて小屋に着いたことになった。
小屋はすでに就寝時刻を過ぎていたが、夜間にお湯を沸かしておいてくれた。小屋番の気づかいに感謝。
凍えた体に暖かいお湯はありがたかった。
小屋の外で遅い食事をとり、着替えて1階をほぼ貸し切り状態でシュラフに潜り込む。横になれば、安堵感のせいかすぐに深い眠りについた。
2016/9/11
小屋の朝は早い。4時ごろから出発していく登山者の物音に起こされる。
幌尻山荘
小屋前で朝食
天気はまずまず。濡れたものを干して6:15に小屋を出発する。
小屋の右手奥あたりが登山口で最初から急登で支尾根へと目指す。
2時間ほどで命の水分岐。
1740mのピークに乗ると、北カールをはさんで幌尻岳の雄大な山容が現れた。
体積の大きい山だ。
雄大なカールにはエゾジカが駆けていくのが見える。
このカールを右から回り込むように尾根を山頂へと向かう。
70歳のH本さんが遅れだしてきた。ここまで頑張ってきたのでなんとか山頂を一緒に踏みたい。
彼女は今回の幌尻岳が日本百名山の百番目の山なのだ。
もっと早くにここを済ませばよかったのに、なぜか最難関の幌尻を残してしまったのだ。
他のメンバーに先に行ってもらって、遅れて二人で歩を進める。
山頂表示板が見えてきた。他のメンバーが拍手と歓声で迎えた。
「泣けてきちゃう・・・。」彼女の目から涙があふれた。
昨日からの苦労もあって、山頂をみんなで踏めたのは実に感慨深いものがあった。
戸蔦別岳や七つ沼カールに未練を残しつつも下山にかかる。
戸蔦別岳への稜線を見ながら途中命の水でのどを潤しガンガン下った。
小屋には15:10着。M崎さん、S田さん、が準備してくれたうどんで舌鼓。700円の缶ビールを飲んでる人もいるけど、飲んでいるのは少数派。アルコールもそこそこにおいしい食事を済ませた。やはり共同食は楽しいもので山行中1回はしたいものである。女性陣に感謝です。昨夜とは違って余裕の就寝となる。ただ明日の渡渉を考えて出発時刻を4時に早めた。
2016/09/12
10日の渡渉に5時間もかかってしまっていたので、第2ゲートからとよぬか山荘へ向かう11時のバスに乗るにはその後の林道歩き2時間を加算して7時間と考えると4時出発となった。 出発時にはメンバーの口数が少ない。またあの渡渉を思うと気持ちが重いのだろうか。 ふと空を見上げると満天の星空。スバルも見える。久しぶりのスバルに「昴だ!」とテンションを上げようとするが、乗ってきてくれたのはT村さんぐらいだった。 小屋下の渡渉、若干水量は減ったものの油断すると一歩を持っていかれそうな水流であった。 この渡渉を済ますとしばらくはまともな登山道が続く。 次第に夜が明けてきた。メンバーも慣れてきたようで渡渉の要領も良く、1回の渡渉にかかる時間も短いようで、渡渉を楽しんでいるようにも見えてきた、ずいぶんと余裕が出てきたものだ。
計算していた時間より2時間ほど早く、7:00に北電の取水口に到着した。
すごい時間の短縮ができた。慣れと水量の減少もあったのだろうが何といってもメンバーの気合の賜物だろう。
強いメンバーが弱いメンバーについてペアでフォローしてくれたのも大きな要因であり、感謝感謝の一言に尽きる。
取水口で装備を解除して一般登山道仕様に変換。
林道歩きの2時間は余韻を楽しんだり、すれ違う登山者に情報提供したりで長い道のりもあっという間の時間だった。
バスに乗車まで1時間ほどの余裕の到着だった。
バスに乗車してひと眠りの後とよぬか山荘に着いた。数人が記念のTシャツを購入。僕も買っておけばよかったと後悔。
台風後の増水とアクセスの不安だらけの山行になったが、本当にメンバーに恵まれた楽しい山行の思い出となった。
メンバーに感謝の一言に尽きる。
このメンバーでいつの日かまた行ける日を夢見ている。
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